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ハナビラタケ|中川幸雄さん「幻のキノコを3年かけて育てる」

茨城県内の産直販売所などでまれに見かける、カリフラワーに似た花びらのように美しい白いキノコをご存じでしょうか? ハナビラタケです。

天然のハナビラタケは、標高1000メートル以上の高山でないと自生しない貴重なキノコで、コリコリとした独特の食感と、マツタケのようなマツの香りが特徴。できる量もすくなく、持ち帰りにくいことから幻のキノコと呼ばれています。

茨城県と栃木県の県境にある城里町の旧七会村地域にある「七会きのこセンター」では、この貴重なハナビラタケの菌床栽培を行っています。

繊細でデリケート、栽培が難しいハナビラタケ

七会地域の8割は山地で、北部の栃木県境には高さ430メートルの鶏足山や378メートルの花香月山などの山々が連なります。山林の静かで冷涼な地域で、水もきれい。キノコ栽培に適した地域で、畜産業とともに古くから村の産業になっていました。

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七会きのこセンターを運営する「農事組合法人 七会きのこ生産組合」の代表理事である中川幸雄さんは、以前はデザイン関係の仕事で働くサラリーマンでした。

業界のデジタル化が進み、関連会社の拠点が海外に移転するなど業界再編が起ころうとするなか、脱サラし故郷の七会地域でキノコ栽培を決意します。3年間、他所でキノコ栽培を学んだ後、2007年11月に、農事組合法人七会きのこ生産組合を設立。使われなくなっていた元キノコ栽培施設を買い取り、たった一人でリノベーション工事を行って、わずか半年で事業をスタートさせたそうです。

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都内のミシュランガイドの星付き店にも卸す七会きのこセンターの特徴は、少量多品種。冬季の現在は、ハナビラタケのほか、アワビタケ、タモギタケ、マイタケ、キクラゲ、ヒラタケといったスーパーでは見かけないようなキノコを栽培しています。

少量多品種は、菌同士が喧嘩しないように品種ごとに部屋を分けて、温度や湿度、CO2濃度の管理をそれぞれすることになるので、とにかく手間がかかってしまいますが、やっぱりおいししいキノコを食べていただきたいので、一つひとつのキノコを丁寧に育てています」と中川さん。

なかでも、ハナビラタケはとくに栽培が難しいといいます。

もともと高山という特殊な環境でしか育たないキノコですから、とても繊細。さらに種菌(キノコの元になる菌)を作るのに2年はかかりますし、種菌から育成するのにも90日はかかるので、なかなか栽培データの蓄積が進みません。大きなキノコメーカーも栽培に参入しても長続きしないのはそのためなんです

また、キノコは菌の胞子から種菌を作って、菌床と呼ばれるオガクズなどに米糠などの栄養源を混ぜた人工培地で育成しますが、この種菌を作るのがとても難しいのです。さらに、種菌自体も培養するごとに劣化が起こるので、新しい種菌にリフレッシュする必要もあるなど、そもそも管理が非常に難しい食材です。

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天然のハナビラタケから種菌を採取することに成功したのが20年ほど前。ハナビラタケの菌床栽培の実用化自体も、ここ10年程で実用化されたもので、栽培法の確立がまだなされていません。

そのため、ハナビラタケの菌床栽培は全国でも10軒もない程度しかないという中川さん。七会きのこセンターでは、独自の温度や湿度などを1℃1%単位で管理し、1年半もの間試行錯誤して、ようやく安定した販売にこぎつけた、まさに苦労の結晶です。

センターの設立時から中川さんとともにキノコ栽培を続ける工場長の川俣寛明さんも、ハナビラタケの育成の難しさを話します。

育成に90日間かかるということは、それだけ雑菌に負けてしまう確率も高まるということです。ほかと比べてとくに雑菌に弱いデリケートなキノコですので、ダメになってしまうものも多いです。だいたい全体の10%くらいはダメになってしまいます。他のキノコでは0.3%くらいですから、ハナビラタケの栽培の難しさを実感していただけると思います

湿度管理が育成では大事ということもあって、キノコ同士間隔をあけて管理する必要もあって場所を取るなど、ほかのキノコよりも生産量が少なくなります。

それでもハナビラタケを育て続けるのは、おいしいキノコをたくさんのお客さまに届けたいという中川さんと川俣さんの想いがあるから。

10月末に都内シェフたちと訪れた生産地ツアーでは、育成室の見学だけでなくハナビラタケの試食も用意していただきました。

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湯浅さん

ハナビラタケの栽培の仕方に感動。実際にその環境を作り出すのに、かなり工夫をしている印象を受けました。ハナビラダケの食感もおもしろく、料理の幅も広そうなので、ぜひ試作してみたいです。

大津さん

ハナビラタケの栽培の難しさからいったら、価格は安いと思いました。味に強い特徴がない分、使いやすい食材だと思いました。

山口さん

ハナビラタケの食感が最高でした。ベトナムのスイーツ「チェー」などにも使用しやすそう。キノコとコオロギ(注:ANTCICADAのメニューに「コオロギラーメン」がある)の相性はとてもよいので期待大です。

ハナビラタケの栽培の難しさや苦労を聞いて、すぐさま価値の高い食材であることを理解したシェフたちは、「さっそく店に帰って使ってみたい」という声が続出し、試作用としてハナビラタケを買って帰る姿がありました。

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完全室内栽培、完全無農薬栽培のこだわりをシェフたちも認めた七会きのこセンターのキノコは、同社のサイトから注文ができます。

いまは、採ったものは2日もあれば完売しているので、いつ注文していただいてもフレッシュなキノコをお届けできます」と中川さん(左)。

川俣さん(右)とともに手塩にかけて育てたハナビラタケや、珍しいキノコたちを、ぜひたくさんの方に味わっていただきたいです!

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次回の更新は、12月23日(水)。生産地ツアーに参加していただいたレストラン「ANTCICADA」では、ツアー後、さっそく七会きのこセンターのキノコを使ってくださっています。どんな料理になったかレポートします!

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Supported by 茨城食彩提案会開催事業
Direction by Megumi Fujita
Edit & Text by Ichiro Erokumae
Photos by Naoto Shimoda, Ichiro Erokumae

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茨城県営業戦略部東京渉外局県産品販売促進チーム
Tel:03-5492-5411(担当:澤幡・佐野)

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