つくばワイン|こうして私たちは、つくばに引き寄せられた
「つくばのワイン? どこかで聞いたことあるかも」「つくばでワイン造ってるなんて知らなかった」と、つくばワインについて話しをすると、こんな答えが多く返ってきます。ときには「おいしいワインが本当に造れるの?」なんて、逆に質問を受けることもあります。
つくば市は、国税庁が2002年に創設した「構造改革特区」に申請し、2017年に「つくばワイン・フルーツ酒特区」(以下、ワイン特区)の認定を受けました。これによって、通常の酒税法ではワインを含む果実酒の醸造免許を得るには年間6,000ℓ以上の製造量が必要なところを、2,000ℓから許可を受けることができるようになったのです。
つくば市では、ワイン特区によって参入障壁が大きく下がり、小規模のワイン造りも可能になりました。そのため、まだまだ数は少ないですが、熱意と決意をもって"根を張った人たち"がつくば市でワインを造り始めているのです。
認定には、筑波山周辺の花崗岩質が風化した土壌が世界の名だたる銘醸地の土質に似ており、質の良いワイン造りが期待できるという地勢的な背景もあります。
風光明媚な筑波山の麓に集まった5軒のワイナリーをまわり、つくばに引き寄せられた理由や、ワイン造りへの想いを取材しました。
ワイン特区に導いた"つくばワインの父"
つくばヴィンヤード|Tsukuba Vineyard
「つくばヴィンヤード」は、霊峰・筑波山の南におよそ12㎞ほどにある栗原地区に醸造所「栗原醸造所」と2.5haのワイン畑があります。
古くは栗原郷と呼ばれた栗原地区は、この地から763年(天平宝字7)に貢献した調布(租税代わりに納めた布)が東大寺正倉院に収蔵されています。江戸時代は天領として江戸幕府の管理下にあり、周囲では稲作が盛んでした。
しかし近年は、稲作農家が減り、農地として活用されていない耕作放棄地も増えていました。
つくばヴィンヤードの代表である髙橋学さんは、2014年からその耕作放棄地を借りてブドウ栽培を始めました。当時の髙橋さんは、つくば市内にある産業技術総合研究所の地質調査総合センターに勤務し岩石や岩盤の解析をする研究者でした。
「北海道猿払村出身で、8人兄弟の7番目。こっちに出てきて長いし、定年も近づいて老後の生業をどうしようかと考えていたときに、北海道・余市町『ドメーヌ・タカヒコ』の曽我貴彦さんに出会ったんです。彼のワイン造りに対する考え方や人柄、生き方に惹かれ、自分でもつくばでワイン造りができるのではないかと思い、勤めながらブドウを育て始めたんです」
2017年から2019年までは、収穫したブドウを筑西市の「来福酒造」に販売してワインにしていました。2020年8月には、果実酒製造免許を取得、栗原醸造所を完成させ、本格的に自社栽培自社醸造を始めました。
「じつは、つくば市にワイン特区の申請を勧めたのは、僕なんですよ。特区になると、醸造免許を得るための製造量が下がるわけですから、僕のように一人でブドウを育てて醸造もしている人たちにとって、すごくありがたいことなんです」
初年度の2020年は、気候の影響もあって製造量は1,350ℓでしたが、2021年には3,500ℓを製造して、年間4,000本の生産をするまでになりました。
ブドウ栽培もワイン醸造も独学。畑では白ブドウ(白ワイン用)の品種であるシャルドネ、モンドブリエ、プティ・マンサン、甲州、アルバリーニョを、黒ブドウ(赤ワイン用)はカベルネ・フラン、小公子、ヤマ・ソービニオン、メルロー、富士の夢、天恵の雫、マスカット・ベーリーA、バルベーラを栽培しています。
そのなかでも髙橋さんが力を入れて栽培しているのが白ワイン品種のプティ・マンサンです。スペインとの国境に連なるピレネー山脈の麓のシュドウェスト(フランス南西部)にあった品種で、小粒で房も小さいながらも味が濃く、酸と糖度が高いのが特徴です。
「プティ・マンサンの生産は、僕が知る限りでは栃木県の『ココ・ファーム・ワイナリー』と長野県の『小布施ワイナリー』くらいしかやっていないと思います」と髙橋さん。
プティ・マンサンとの出会いは、「ドメーヌ・タカヒコ」の曽我氏に、どんなブドウを植えたらいいか相談した際に勧められたのがきっかけです。その後、山梨県の苗木屋に電話したところ、たまたまプティ・マンサンがあると聞いてすぐに苗木を購入したといいます。
「小布施で曽我さんのお兄さんがプティ・マンサンを育てているので、ワインの質がとても良いことを知っていたのではないかな。希少性という意味でも北関東でプティ・マンサンを育てたらおもしろいワインができるんじゃないか、という曽我さんの考えもあったかもしれませんね」
プティ・マンサンが日本ではあまり育てられていないのは、房自体が小さいことにあるだろうと髙橋さん。重さで収入が決まるブドウ農家から見ると生産的な魅力を感じにくいからです。しかし、ワインにすると素晴らしいものができるのは実際に醸造してみて実感したことだといいます。
「いまでは、つくばヴィンヤードを代表する品種になっています。現在、600本のプティ・マンサンの樹を植えています。火山灰土壌で粘土質の土地にもあっているので、僕の周りの醸造家たちに苗木を譲ったりして勧めているところです。いずれ、つくばの代表品種になり、それぞれの地区で育ったプティ・マンサンでワインを造って、出来あがった秋にプティ・マンサン祭りができたら最高だと考えています」
ワイン造りは、おいしいブドウ造りである
母が育てた巨峰のおいしさもワインで伝えたい
ル・ボワ・ダジュール|le bois d'azur
つくばエクスプレスの「万博記念公園」駅から車で10分ほどの住宅地にある「ル・ボワ・ダジュール」は、フランスのワインの銘醸地域であるジュラとブルゴーニュの4軒のワイナリーで3年半研修し2019年に帰国した、青木誠さんが2021年に開いたワイナリーです。
大学では農学部で学んだ後、飲食店で勤務しながらソムリエ資格pを取得した青木さんは、ワイン造りを学ぶためフランスに渡ります。
「僕がお世話になったのは、田舎のワイナリーでした。そこでは、スーツを着てテイスティングするような場面はなく、みんな泥だらけの農民の格好のままテイスティングをしていました。それを見ていて、ワイン造りは農業であることを確信。そしてワイン造りはブドウ作りであるということが本当の意味でわかったように思います」
帰国した青木さんは、2020年から実家のブドウ園に入って生食用の巨峰栽培を手伝いながら、ワイン用のブドウも栽培。ワイン造りをスタートさせます。
「つくば市がワイン特区を取得したというのは、フランスで知りました。もともと帰国したらワインを造ろうと思っていたので、直接的なきっかけではないですが、小規模でも醸造許可がおりるというのは、僕にとってもありがたいことで、当初の計画を5年くらい前倒しにすることができました」
現在は、実家に隣接する巨峰の畑のほか、筑波山の麓の北条地区にも畑をもち、広さは合わせて3ha。白ワイン品種は、ヒムロットやピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブラン、サヴァニャン、シュナン・ブランを、赤ワイン品種は、巨峰を育てています。
「醸造のこだわりは、基本はブドウ果汁だけで造ること。天然酵母を使い、補糖、補酸、清澄、濾過もしない、亜硫酸も極力使わないことです。なかでも、巨峰は大切にしていきたい品種の一つです。巨峰は母が大切に育ててきた品種であり、そのブドウのおいしさをワインという形でも伝えていきたいという思いがあるからです」
青木さんの母の道子さんがはじめた生食用の巨峰栽培は、道子さんの父・義則さんが亡くなったことがきっかけ。道子さんが畑を受け継ぎ、2000年から巨峰の栽培を新しくはじめたといいます。
フランス修業時代、ジュラ地方で栽培されているプールサールというワイン品種を食べた時に巨峰に味わいが似ており、巨峰のワインとしての可能性を感じ、挑戦してみたいと考えました。
そして、道子さんとともに育てた巨峰を使ったのが「mon petit rouge モン・プティ・ルージュ」です。巨峰100%でアルコール度数は8.5%。野生酵母を利用し、ブドウの持つ力を最大限引きだすワイン造りは、青木さんのワイン造りに共通することです。
「母が作った巨峰は糖度が高く、他の巨峰と比べても断然おいしいです。ブドウを育てるという事については、まだまだ母から学ぶことがあることを実感しています」
「『mon petit rouge モン・プティ・ルージュ』は、うま味がある出汁とかに合いそうです、蕎麦なんかいいかもしれません。白ワイン品種の『ヒムロット』主体の『mon petit blanc モン・プティ・ブラン』は、軽やかな飲み口で夏向き、アスパラガスのグリルとかと合わせたいです」
つくばは花崗岩土壌で、ブドウ栽培に合う土地だと青木さん。フランス修業時代、白ワインを得意とするワイン生産者の元で修業をしてきたため、白ワインをメインにこれから考えていますが、巨峰は、青木さんのルーツでもあるのでやり続けていくといいます。
「やっぱり『生食用の巨峰では、良いワインができない』という人も多いと思うので、それを変えるようなものを造りたいですね」
将来的には、ワイン用ブドウの単一品種のワインをつくり、品種とその土地の個性を表現していきたいと青木さんはいいます。
花崗岩土壌で育つヨーロッパ品種から
本格的なワインを造りたい
ビーズニーズヴィンヤーズ|Bee's Knees Vineyards
かつて筑波鉄道が通っていた廃線は「つくば霞ケ浦りんりんロード」と呼ばれるサイクリングロードに再整備され、国土交通省から日本初のナショナルサイクルロードに認定されました。県内外のサイクリングファンの憩いの道になっており、その道のなかでもつくば市の沼田地区は、とくに筑波山に最接近するスポットで、「霊峰」と呼ぶにふさわしい山容を仰ぎ見ることができます。
この沼田地区と臼井(六所)地区にブドウ畑をもつのが「ビーズニーズヴィンヤーズ」の今村ことよさんです。
茨城県守谷市出身の今村さんは、筑波大学で生物学の博士号を取得した後、製薬会社の三共(後に第一製薬と合併し、第一三共に)に入社しました。在職中の2007年、ワイン好きが高じて、日本ソムリエ協会ワインエキスパートを取得。このころから頭の片隅に「ワインの仕事に就けたら」という思いがあったといいます。
仕事を続けながら長野県のワイナリーに通う日々。そして2013年、40歳になった今村さんは、第一三共を退職してワイン造りに転身します。
「つくばが好きで、つくばで就職ができればと思っていたんです。ワイン造りであれば、つくばに戻れるかもしれない、そんな気持ちもありました」
退職後は、長野県東御市のワイナリー「リュードヴァン」で栽培と醸造を学び2015年に筑波山麓の畑を借りて新規就農、「ビーズニーズヴィンヤーズ」を開園しました。「大好きな筑波山に呼ばれて、この地にやってきてしまったのかもしれません。守谷から見ていたときは小さかった筑波山が、こんなに大きく見えるんです」と今村さんは笑顔で話します。
研究者気質ゆえか、今村さんは畑に植えるブドウ品種をすべて事前に決めていたといいます。白ワイン品種は、シャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョ、赤ワイン品種は、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、タナなど、多くの人が一度は聞いたことがあるようなヨーロッパを代表するワイン用ブドウの品種が揃っています。
植栽も計画的で、気候に合うかどうかや、将来的にどんなワインを造りたいかなどを想定して、10年の事業計画を立てたうえで栽培をスタート。7年経った今、当時の計画通りに収穫量が伸びているそうです。
畑は花崗岩土壌の地質で、ミネラルが多く、ワインはやや硬質な味わいに仕上がります。そのため、良い意味で「日本ワインらしくない」といわれることもあるといいます。
「私は、自己主張が強いワインを造りたいとは思っていません。はなやかな香りと優しい味わいで、料理の味を邪魔しない、食に寄り添うワインを造っていきたいんです。寿司や鰻といった和食と合わせることができそうだと思っています。また、レンコンや山菜など茨城県の食材とのペアリングも重視していきたいです」
都内のイノベーティブ・レストランで、今村さんと同じ守谷市出身の本橋健一郎さんがオーナーを務める「JULIA」で今村さんのワインが扱われているそう。茨城県の食材とのペアリングが楽しみです。
「現在は、育てたブドウを牛久市の『麦と葡萄 牛久醸造場』に持ち込んで、委託醸造という形ではありますが、自分自身で醸造作業を行っています。自分が思い描くワインメイキングができるのであれば、自家醸造でも、委託醸造でも、どちらでも構わないと思っていますが、委託先では各社それぞれの機器やスペースなどの都合上、完全に思い通りの醸造ができないなどの制約はあります。そのため数年のうちには、筑波山の麓、ブドウ畑の接地に醸造所を造りたいと計画しているんです」
「土地にあう品種を目指す」という
つくばのスピリットをいち早く掲げる
つくばワイナリー|Tsukuba Winery
「つくばワイナリー」がある北条地区は、10年ほど前までは、茨城県住宅供給公社が宅地分譲地として計画していたエリアでした。しかし、計画が廃止されたことをきっかけに、不動産会社であるカドヤカンパニーが購入。宅地として分譲するのではなく、この風光明媚な土地を活かした新しいつくばの価値を創ろうとして考え、ブドウ畑を併設したワイナリー計画を立てたことが設立のきっかけです。
筑波山の麓におよそ18ha、約6,000本のブドウを栽培。おもな品種は5種類。なかでも2013年の創設当初から栽培されているのが赤ワイン品種の富士の夢と白ワイン品種の北天の雫です。
「ワイン用のブドウを育てるにあたって山梨県の志村葡萄研究所の志村富男先生に相談をさせていただきました。志村先生は、日本でワイン用のブドウを栽培するなら、海外の品種にこだわらず日本の気候風土に合ったブドウを栽培するべきという考え方をお持ちの方です。幸いにもつくばの環境が、志村先生が交配した品種の『北天の雫』と『富士の夢』を育てるのに適していることがわかり、2つの品種の栽培からつくばワイナリーは、2013年にスタートしたのです」
そう説明するのはつくばワイナリーを運営するカドヤカンパニーの専務取締役である岡崎洋司さんです。
やがて富士の夢と北天の雫の栽培が安定してくると、フランスのワイン用ブドウ品種の栽培を開始していきます。なかでもマルスランは、2019年にA.O.C.ボルドーおよびボルドー・シュペリウールの生産者団体が、新たなブドウ品種の導入を許可した7種類の品種のうちの一つで、フランス国内で注目を集めているブドウでもあります。
さらに2019年には、ついにつくば市初となる自家醸造所が完成。国内複数の醸造所での経験をもつ北村工さんが醸造責任者に就任し、さらに高いクオリティのワイン造りを目指しています。
「2019年に最初のヴィンテージができ、それを地元のつくば市や茨城県のみなさんにたくさん飲んでいただけてうれしかったですね。つくばの地でブドウを育てて醸造してできたワインですから、まずは地元の人に飲んでいただきたいです。地元や関東圏に向けて販売していくことで、たとえば酸化防止剤にあたる亜硫酸塩の添加を極力少なくすることもできますので、果汁の良さをさらに味わっていただきやすくなると思います」と北村さんはいいます。
地元浅草の飲食店で楽しめるワインを造りたい
スペンサーズ・ヴィンヤーズ|SPENCER’S VINEYARDS
都内の住宅メーカーに勤める芦野広昭さんは、高級住宅を販売する営業マンだったこともあり、「富裕層のお客様ともきちんと話ができるように」と、ワインを勉強し始めました。
「もともとなんでも自分で作りたいと思うタイプでね。ワインが好きになったら、ブドウも育ててみたいと思うようになって。栃木県の那須の別荘でブドウを育てようとしたんです」
2018年にワインエキスパートを取得すると、2019年4月からは長野県の「千曲川ワインアカデミー」で本格的にブドウ栽培とワイン醸造、ワイナリーの起業と経営について学びます。
そしていよいよ本格的なワイン造りができると、那須で最初のブドウ栽培をスタートしましたが、猿によってブドウが被害を受けてしまい、栽培は断念。別の場所を探すことになります。
「ちょうど娘が筑波大学の大学院に通っていたんですよ。私たちは、浅草に住んでいたので、つくばエクスプレスを使えば、1時間もあればつくばに着く。それなら、那須の別荘を売りに出して、うまく売れたらそのお金を使ってつくばでブドウ栽培を始めようと考えたんです」
すると別荘の売却が1週間で決まり、トントン拍子でつくば市での新規就農が実現。「スペンサーズ・ヴィンヤーズ」を開園すると、2020年2月から畑に入り、翌3月に植樹しました。
秋には、前述「ビーズニーズヴィンヤーズ」からブドウを購入し、母校の千曲川ワインアカデミーの母体である日本ワイン農業研究所の「アルカンヴーニュ」で委託醸造を行い「『グッドボーイ』エピソード0」を造りました。
「地元の浅草に『浅草じゅうろく』という蕎麦懐石の料理屋さんがあるんです。僕が造るワインは、そこの料理に合わせることを目標に造っています。でも、つくばや下町のいろいろなお店で使ってもらいたいですね」
筑波山の麓、前述のつくばワイナリーにも近い平沢地区に流れる用水路沿いの土地に4カ所、合計1.4haのブドウ畑で、白ワイン品種は、ピノ・グリ、プティ・マンサン、アルバリーニョ、赤ワイン品種は、カベルネ・フラン、シラーを育てています。
「2022年の自圃場のファースト・ヴィンテージは、『麦と葡萄 牛久醸造場』に委託醸造をする予定です。600本くらい造れるのではないかと思っています」
さまざまな縁に導かれてつくばにやってきた芦野さん。「つくばの方々は、都心に近いこともあって"都会慣れ”しているから、僕みたいな外の人が来ても受け入れてくれるんです」といいますが、実際は芦野さんの「人たらし」な性格が、地元の人たちとの交流を円滑にさせたのは明らかです。
2011年の東日本大震災のとき、仙台市に営業責任者として単身赴任していた芦野さん。スーパーもコンビニも閉まっているなか、炊き出し班長として約100名の社員の賄を担当しました。沈みがちな毎日のなかで唯一、夕礼で発表する翌日のメニューに社員が盛り上がりを見せたといいます。
「食って一瞬で人を幸せにできるんだ」ということを初めて感じたという芦野さん。40代後半であったこともあり、シェフを目指すことはできませんでしたが、この時の経験がきっかけでワイングロワー(栽培醸造家)を目指すようになったといいます。
「僕はワインだけを造りたいわけじゃなくて、自分が造ったワインが飲める場所も作りたい。今は、大正時代の建物をリノベーションして、みんながワインと料理を楽しめる場所を作ろうともしています。極論をいったら、ワイン造りを真剣にしたいという人がいたらまかせちゃっていいとも思っているんです」
「なんでも自分が、という気持ちはあまりないんです」と笑う芦野さんは、ワイン醸造家であり、ワインで人を繋ぐプロデューサーとして、つくばワインを盛り上げてくれそうです。
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セカンド・ライフの選択としてのワイン造りや、ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)への挑戦、エレガントなヨーロッパ品種へのあこがれなど、さまざまな決意や縁を紡いでつくばに集まった人々は今、それぞれの思いをワイン造りに込めて、未来に花開かせようとしています。
「つくばワインといえばこれ」というブドウ品種を作るべきだという声もありますが、つくばでワインを造りたいと集まった人たちが「これだ!」と見つけた品種で自由にワインを造りあっているこの独特の熱気やグルーヴ感は、産地創成期の今しか体験できない貴重な瞬間ともいえます。
あの時のつくばワインは、すごかった――。10年後そんな風に、語り継がれることになるかもしれない2022年。「つくばワインの今」に、注目してみてください。
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Supported by 茨城食彩提案会開催事業
Direction by Megumi Fujita
Text by Ichiro Erokumae
Photos by Naoto Shimota, Ichiro Erokumae
Assistant Editor by Daichi Yoshikawa